○那賀町山づくり条例

平成27年3月23日

条例第24号

那賀町は、森林が総面積のほとんどを占め、温暖多雨な気候と豊かな土壌に恵まれ、古くから「木頭林業」を代表とした林業経営により、地域の中核産業として位置づけられてきた。

森林は、自然災害を防ぎ、多様な生態系を保全し、豊かで清らかな水を蓄え、木材や山菜などの林産物を提供し、潤いと安らぎの場となるなど、町民に様々な恵沢を与え、社会経済の発展に寄与してきた。

しかし、急激な過疎化及び高齢化の進行による担い手不足や木材価格の低迷などにより、林業及び木材産業の不振が続いており、このままでは森林の有する多面的機能の発揮に支障を来し、町民の安全で豊かな生活に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。

このような状況に対処し、基幹産業である林業により地域の一体的な発展を実現するためには、町、森林所有者、森林組合等の事業体、木材産業関係者及び町民が相互に協力し、それぞれの役割を積極的に果たすことにより、林業及び木材産業を振興し、森林を守り育てる山づくりを実施していかなければならない。

ここに、那賀町の山づくりについて基本理念を明らかにしてその方向性を示し、これらに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、那賀町の山づくりを実施するために森林に関する基本的施策並びに林業及び木材産業の振興に関する基本的施策について、基本理念を定め、町、森林所有者、森林組合等の事業体及び木材産業関係者の責務並びに町民の役割を明らかにするとともに、那賀町の山づくりの施策の基本となる事項を定めて、これらの施策を総合的かつ計画的に推進することにより、森林の有する多面的機能の持続的な発揮並びに森林からもたらされる恵沢を町民の共通の財産として、次世代に引き継ぐとともに、林業による活力ある地域社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 山づくり 那賀町の森林所有者、森林組合等の事業体、木材産業関係者及び町民が一体となり林業を振興しつつ、森林の多面的機能に理解を深め、森林を守り、又は育てることをいう。

(2) 森林の有する多面的機能 森林の有する郷土の保全、災害の防止、自然環境の保全、水源のかん養、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能をいう。

(3) 森林所有者 権原に基づき森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者(国、県及び市町村を除く。)をいう。

(4) 森林組合等の事業体 森林組合法(昭和53年法律第36号)の規定による森林組合及び森林施業(造林、保育、伐採その他の森林における施業をいう。以下同じ。)を行う事業者をいう。

(5) 木材産業関係者 木材その他の林産物の加工及び流通の事業を営む者をいう。

(6) 町産材 那賀町内で生産された木材をいう。

(基本理念)

第3条 那賀町の山づくりには、森林の有する多面的機能が町民生活にとってかけがえのない財産であるとともに、林業及び木材産業が地域社会の持続的な発展に重要な役割を担っていることにかんがみ、長期的な展望に立ち、町、森林所有者、森林組合等の事業体、木材産業関係者及び町民の適切な役割分担並びに相互の連携及び協力の下、将来にわたり持続的に推進されなければならない。

(町の責務)

第4条 町は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、那賀町の山づくりに関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 町は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、森林所有者、森林組合等の事業体、木材産業関係者及び町民(以下「森林所有者等」という。)との協働に努めるとともに、国及び県との連携を図るものとする。

(森林所有者の責務)

第5条 森林所有者は、基本理念にのっとり、町が実施する施策に協力するとともに、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう、その所有する森林の適切な整備及び保全に積極的に努めるものとする。

(森林組合等の事業体の責務)

第6条 森林組合等の事業体は、基本理念にのっとり、町が実施する施策に協力するとともに、地域における森林の経営の中核的な担い手として、森林の適切な整備及び保全並びに林業の振興に積極的に努めるものとする。

(木材産業関係者の責務)

第7条 木材産業関係者は、基本理念にのっとり、町が実施する施策に協力するとともに、町産材等の有効利用の推進その他の木材産業の振興に積極的に努めるものとする。

(町民の役割)

第8条 町民は、基本理念にのっとり、町が実施する施策に協力するとともに、森林がもたらす恵沢を享受していることの重要性についての認識を深めるよう努めるものとする。

(基本指針の策定)

第9条 町長は、那賀町の山づくりの計画的な推進を図るため、林業に関する基本的な指針「那賀町林業マスタープラン」(以下「指針」という。)を定めなければならない。

2 指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 重点目標と実施する期間

(2) 那賀町の林業に関する施策の方針

(3) 那賀町の林業に関する施策の基本となる事項

(4) 前3号に掲げるもののほか、那賀町の林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 町長は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、議会の意見を聴かなければならない。

4 町長は、指針を定めたときは、これを公表しなければならない。

5 前2項の規定は、指針の変更について準用する。

(町産材の安定供給の促進)

第10条 町は、町産材の安定供給の促進を図るため、高性能な林業機械の積極的な導入の促進、森林における路網の計画的な整備等の森林施業の集約化及び合理化の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 町は、森林組合等の事業体が森林所有者相互の森林施業に関する合意形成の仲介、林業に関する計画の提案等により町産材の安定供給の促進に積極的な役割を果たすことができるよう、情報の提供や機関の設置等、その他の必要な施策を講ずるものとする。

(町産材の利用の促進)

第11条 町は、町産材の利用の促進を図るため、「那賀町木材利用方針」に基づき公共事業における町産材の利用の推進、町産材を使用する住宅等の建設の促進、バイオマスへの活用、その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 町は、木材産業関係者が町産材の加工の効率化及び流通の合理化等により町産材の利用の促進に積極的な役割を果たすことができるよう、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(林業従事者の育成)

第12条 町は、林業従事者の育成及び確保を図るため、林業事業体の育成、林業に係る高度な技術の習得のための研修の実施、労働条件の向上の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(山村地域の活性化)

第13条 町は、山村地域の活性化を促進するため、森林資源の総合的な利用、都市との交流の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(森林の適切な整備及び保全)

第14条 町は、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう、山づくりに必要な施策を講ずるものとする。

2 町は、前項の施策を講ずるに当たっては、森林の植生状態、立地条件、利用実績等に基づく森林の重視すべき機能及び地域の特性に応じて設定した森林の区分に従うものとする。

3 町は、自ら森林の適切な整備及び保全を行うことが困難である森林所有者が他の森林所有者との共同施業、森林組合等の事業体に対する委託等により適切な森林の整備及び保全を行うことができるよう、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(山づくりに関する教育の推進)

第15条 町は、山づくりによってもたらされる森林の多面的機能についての町民の理解及び関心を深め、森林をすべての町民で守り育てる意識の醸成を図るため、次世代を担う若者を対象とした林業の体験学習の実施、指導者の養成その他の山づくりに関する林業教育の推進に必要な施策を講ずるものとする。

(林業の文化の継承)

第16条 町は、地域における伝統的な森林施業の技術を次世代に引き継ぐため、木の保育等の技術に係る研修及び木材の生産流通等の技術に係る研修実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

(先進的な取組に対する支援)

第17条 町は、山づくりに関する先進的な取組を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第18条 町は、基本理念に基づき那賀町の山づくりに関する施策を実施するため、効果的かつ効率的に財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(実施状況の報告)

第19条 町長は、毎年度1回、指針に基づき町が講じた施策の実施状況をとりまとめ、議会に報告するものとする。

この条例は、平成27年4月1日から施行する。

那賀町山づくり条例

平成27年3月23日 条例第24号

(平成27年4月1日施行)